大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和25年(う)269号 判決 1950年11月20日

被告人

田中照男

主文

原判決を破棄する。

被告人を罰金七千円に処する。

右罰金を完納し得ない場合には、金百円を壱日の割合で換算した期間、被告人を労役場に留置する。

押収に係るアトロモルフイン注射液四拾管入壱箱(証第壱号)、ドーフル散弍拾五瓦入弍本

(証第弍号)及燐酸コデイン弍、七瓦入壱本(証第参号)は孰れも之を没収する。

原審竝当審に於ける訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人岡本治太郎の控訴の趣意第一に付いて。

本件のような麻薬を不法に讓受けた旨の麻薬取締法違反被告事件に於て、当該物件が果して麻薬取締法に所謂麻薬に該当するか否かを判定するに際つては、必ずしも所論のような化学的客観的な方法によらなければならぬと謂うが如き法則はなく、従て原判決のように、被告人及関係人の供述竝当該讓受物件の存在を彼是綜合して認定する方法も敢えて之を違法と目すべき謂われは毫も存しない。而して原判決挙示の証拠によれば、所論各物件が麻薬取締法に所謂麻薬に該当することを認め得ないこともなく、殊に本件訴訟記録竝原裁判所に於て取り調べた証拠に加え、当審に於て取り調べた当審受命裁判官の証人山田光夫に対する証人尋問調書、当審鑑定人木下彌兵衛名義の鑑定書竝検事の山田光夫に対する昭和二十五年六月七日附供述調書に徴するも、原判決の右各認定事実に誤認の廉あることを発見し得ないから、結局原判決には所論のような違法が一つもなく、論旨は其の孰れの点からするも理由がない。

(註 本件は擬律錯誤により破棄自判)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例